花豆通信 第11号

 
 
 



    目  次

 花豆ライブラリーJ
  物語「赤い花 白い花」      安房 直子

 □第十回「花豆の会の集い」報告
安房さんの世界をわかちあった時間      佐々木 健太
お話  「花の絵本をめぐって」         画家 南塚 直子
10回花豆の会出席者のお名前
10花豆の会の集い当日会計

 □その他
  白樺のテーブルトーク 「保谷の家」      ハチ

  安房作品と私 第三回 「しんぼう、しんぼう〜『海の館のひらめ』 より 」      竹本 由紀子  
  安房直子記念館を開館して         出水 秀樹

  
   花豆文庫だより      根岸 一博
   いいメール

  ありがとうございました〜カンパ、寄付をいただいた方々
  2008
年度 会計報告
  花豆・粒粒(お知らせ・近況報告)


  あとがき



 

  

 





 花豆ライブラリーJ 物語

赤い花 白い花 

安房 直子            

 おばさんの手は何と暖かかったことでしょう。何とやさしかったことでしょう。
 けんちゃんは、あまずっぱい感情が後から後からこみ上げてくるのをおぼえました。
おばさんの手のぬくみはお母さんの手のぬくみに似ていました。おばさんの顔さえ見
なかったら、そしておばさんが声さえ出さなかったらけんちゃんはきっとお母さんと
歩いているつもりになれたでしょうに。  
(本文より一部抜粋)


 安房直子さんが十五歳のときに、雑誌『愛児』が企画した読者によるリレー童話(第2回)に投稿し、掲載された作品です。

(1959・1 『愛児』2 日本愛児協会発行 掲載)

 




  


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  第10回「花豆の会の集い」 報告

 安房さんの世界を分かちあった時間
  
佐々木  健太


 咲き始めた紫陽花の花を、鮮やかに濡らす小雨のなか、五月二十四日(日)午後二時より、日本女子大学桜楓二号館で、第十回「花豆の会の集い」が開かれました。全国から五十三名が集いました。
 司会は近江竹生さんと上松恵美子さん。最初にスタッフの坂口正彦さんより、「回を重ねて十回になり、参加者の一員としても毎年楽しみです。安房さんとのつながりが深まっていきます」と挨拶がありました。
 次は朗読です。安房さんの遺作で、今日のゲスト南塚直子さん画の絵本『うぐいす』を、絵本文庫「かばくんルーム」を主宰される、松本忍さん(写真)が読まれました。おさえた感じで、語りかけるように話し出され、また「うぐいすの少女」が生き生きと描写されました。
 続いて、安房さんとは縁の深い画家の、南塚直子さんの「花の絵本をめぐって」と題されたお話がありました。
安房さんとの出会いから、絵本づくりのご苦心を、四冊の絵本の思い出のページを開いて、指し示しながらのお話でした。
 とくに、バレエシューズが、ほんとうに桜で染まるか、安房さんが実験してみたというエピソードに、安房さんらしい一面を知りました。交友も深かった南塚さんの「素顔の安房さん」は、ほとんどはじめて聞くお話で、安房さんの世界にそのままつながるものを感じました。
「お茶と懇談」の時間では、皆さんから一言ずつ話していただきました。保谷で二日間にわたって行われた「安房直子朗読館」、「青い糸」のオペラの公演など、安房さんの作品がいろいろに広がっていく活動のお話もありました。今回の参加者最年少は、中学一年生でした。
 最後に根岸一博さんから挨拶があり、名残りつきないなか、閉会になりました。

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  第十回花豆の会の集い お話

 花の絵本をめぐって        画家 南塚 直子

 皆様こんにちは、南塚直子です。
 大勢の方々の前でお話することは苦手ですが、今日は花の絵本を中心に、安房さんとどのように絵本作りをしたかを、お話ししたいと思います。
 安房さんの童話のファンであった私は、三十年ほど前にパステル画の個展をした時に、見知らぬ安房さんに思いきって案内の葉書をお送りしました。安房さんは、その時には、いらっしゃいませんでしたが、個展の後にお電話をくださいまして、初めて直接お話できました。

 私はその頃、黒い紙にパステルで絵を描いていましたが、その感じと安房さんの作品世界が近いような気がしていました。 それに、安房さんの作品を読むと、いつもすーっと絵が浮かんできます。それで、いつか安房さんの作品に絵を描くことができたらと、夢見ていたのです。
 幸運にも安房さんの方も私の案内状の絵を気に入ってくださり、挿絵を描かせてくださるということでご縁ができました。最初はベルマーク新聞の小さな挿絵でした。

「青 い 花」

 『青い花』のイラストを描くお話は、岩崎書店の津久井さんからのお電話で、絵本化するにあたって、安房さんとご相談されたところ、私の絵をのぞまれたとのことでした。
 それから、安房さんともお会いして、この絵本を作ることになりました。私は、安房さんといっしょに絵本を作れるうれしさの反面、それまでほとんどイラストレーションの経験がなく不安でした。けれども、安房さんが、「自分の画集を作るような気持ちで、好きなように描けばよいのよ」とおっしゃってくださり、だいぶ気持ちが楽になりました。私は、男性の絵は苦手でしたが、お話の中の女の子に導かれて、描ける場面から描き、不得意なところは、後回しにしたりしました。パステルは消すことができるので、消したり描いたりしながら、絵を完成させていきました。絵は、ほとんどが紫色の紙に描きました。あじさいの花の世界が紫色の紙に合うと思ったからです。

 私は、あじさいの精の女の子が、雨に濡れて、ぽつんと立っているというような場面がとても好きで、描いていて楽しく、安房さんとも気があって、本当に、楽しく仕事をさせていただきました。

「やさしいたんぽぽ」

 『青い花』の後、しばらくして、また安房さんからお電話をいただきました。
安房さんは机の引き出しの中に、創作のヒントになるメモとか、ご自分の短い文がのったパンフレットなどをしまわれていたらしいのですが、その中に、数年前にどこかの会社の広告のパンフレットに書かれた短い物語があって、私にぴったりのお話だからどうかしら?とおっしゃり、すぐに送ってくださいました。
 翌日、届いたお手紙を持って、たまたま子供と行く約束をしていた多摩川へ、自転車でまいりました。子供たちは、川辺で遊んでおりましたので、私は、ひとり、草原に座り原稿を読みました。

ひが くれて、もう だれも いなくなった
はるの のはらに、おんなのこが ひとり
たっていました。おんなのこは、エプロン
のなかに、ちいさな あたたかいものを
かくしていました。

 この書きだしの文章を読んだとたん、女の子の立っている情景がすーっと浮かびあがりました。そして読み進むにつれて、どんどん場面が頭の中に展開していきます。

  それで、これは絵本に出来ると確信いたしまして、家に帰るとすぐに安房さんにお電話をして、ぜひにと申し上げました。それから、安房さんから小峰書店にお話くださいまして、了解されました。

 この本の絵も、紫色の紙を使っているのですが、部分的には、黒い紙も使っています。出版され、課題図書にもなりましたが、何年かたってから、絵がこわいといわれたことがあります(笑い)。特に表紙の絵の紫と黄色と緑、これは補色関係の色で、対立する色なんですね。それで、目立つけれど、こういう配色の色は、プロからすると危険性が伴う色なんだそうです。私は、夕暮れの世界にふさわしいと思って、紫の色を使うことになんの疑問も抱いてはいませんでしたので、そんな話を聞いてびっくりしました。それから、もう一つこわいといわれた絵があります(笑い)。電車に乗っている捨て猫や犬たちが、こわいと言われてしまいました。
でも、安房さんも編集の小峰さんも、なにもおっしゃいませんでしたから、これでいいのかなと思っていました。この
物語は、ほんとうは、ちょっとこわいお話ですよね。それで、私もこれでよいと思っていたのかもしれません。
 ともかく、出来上がったときに安房さんが、じっと手に持たれて、「私、この本好きだわ」とおっしゃってくださったのが、今も忘れられない嬉しさです。

 「うさぎのくれたバレエシューズ」

 このお話も、短いメモのようなものでした。やはり安房さんの引き出しの中から出てきて、読んでみてと言われした。
それから、小峰さんと三人でお会いして、絵本作りの相談が始まりました。
 当初は、桜の木はなんの意味も持たず、ただの背景として立っていたのですが、話し合っている中で、小峰さんの提案もあり、桜の木の汁で靴を染めることにしたらどうかということになりました。

すると、「じゃあ、染まるかどうか実験をしてみるわ」と、安房さんがおっしゃり、実験をなさったのです。染物では、花の色を出すには、花の咲く前の枝を使うらしいのですね。話が出たのが秋だったので、実験は二月くらいになりました。そして、ほんとうに染める事に成功なさったのです(笑い)。

 安房さんは、ファンタジー作家と言われていますが、いつも、「ファンタジーであるからこそ、リアリズムが大切なのよ」とおっしゃっていました。それで、この実験で大丈夫ということになり、桜の木で染めるお話が進められ、うさぎのバレエ団と桜の木が密接な関係を持つようになりました。
 絵は、銅版画です。ハンガリーで勉強してきましたが、これは、銅版に直接ぎーっと線を彫っていくやり方でしましたので、力が要るので、けっこう時間をかけて作りました。一版多色刷りですので、一枚の版の上に、いろいろな色を指で乗せていきます。浮世絵などでは、色ごとに版を重ねていくのですが…。私の場合は、ここは赤、ここは緑…と一つの版に色を乗せ、その後布でふきとります。その時に色が混ざらないようにするのが、けっこう大変な仕事です。うさぎが緑色になったり、野原がピンク色になっては、いけませんからね。

見開きの場合、一日に、せいぜい二枚ぐらいしか刷れませんが、それも、必ずしも成功するとはかぎりません。同じものが二枚できるわけではないので、何枚か刷って、ベストなものを選びながら作りました。
 この本は、女の子たちのロングセラーになったようで、本を読んでから、バレエを習い始めたとか、ピンクの服を着るようになったとか聞くと、嬉しくなります。

 「たんぽぽ色のりぼん」

 『たんぽぽ色のりぼん』は、安房さんが亡くなる少し前に原稿をいただきました。文は、そのまま、直さないでということでした。下絵を考えておりましたら、それから半年ぐらいで、安房さんは突然亡くなってしまわれました。銅版画で描く場合、私は、二年ぐらいかけて、下絵を考えます。いつものゆっくりした私のペースで製作しておりましたので、お亡くなりになったことを、岩崎書店の津久井さんからお聞きした時は、晴天の霹靂で、ものすごいショックを受けました。御身体の調子が悪く、入院なされたと聞き、お母さまにお電話したところ、今はお見舞いは遠慮くださいというお話でしたので、心配していたところでしたけれども、まさか、そんなに重いご病気だとは思ってもみませんでしたので、ほんとうに驚き、言葉にならない悲しみでした…。
 それで、これは亡くなられてから本になり、遺作となりました。

 実は、もうひとつ、これは、花のお話ではありませんが、「うぐいす」という作品を「目白児童文学」に書かれていたことがわかりまして、この作品の方が後だとわかり、これも小峰書店から本として出すことになり、私が絵を描かせていただきました。これは、うぐいすがお礼にくるという、とても可愛らしいお話で、水彩とパステルで描かせていただきました。
 絵本に関するお話は、これで終わりです。


 素顔の安房さん

 ここからは、絵本作り以外でおつきあいさせていただいた、安房さんについてお話ししたいと思います。
 安房さんが亡くなられてから、安房さんのお姉さまや、日本女子大の方からお聞きした話では、安房さんは、お友達づき合いの少ない方で、プライベートなことは、あまりお話なさらなかったそうです。でも、私と安房さんとは、とても気が合ったんですね。私は六歳年下ですが、なんというか、まるで姉妹のようにとても分かる部分がありました。それで安房さんも、私のいうことをよく聞いてくださったのだと思います。(中略)

 お人形

 安房さんは、お人形がお好きで、何体かお持ちでしたが、今は、日本女子大の記念館に保存されているとのことです。
 実は、私もお人形が大好きなのです。
それで、安房さんとアンティークの人形が欲しいなどと、話していたのですね。安房さんは最初、市松人形は欲しいけれど、古いお人形は、こわいとおっしゃっていました。前の持ち主がどんな人だったか、どんな扱いをしたかなどわからないし、怨念のようなものがあるかもしれないので(笑い)、こわいとおっしゃいました。
でもある日、「市松人形を買ったから、見て」とおっしゃったので、びっくりしました。その人形は体は新しく、着物だけが古布で作られていました。布はよく洗ってから縫われているので、こわくはない、とのことでした。「工房朋」というところの作品で、そのお店の人形展に一緒にいきましょうと誘われ、銀座に行きました。とてもきれいなお人形ばかりでした。「あなたも買わない?」といわれましたが、私にはちょっと手の届くお値だんではなかったので、買いませんでした。

  その後、すっかりその工房のお人形が気に入られ、三体か四体求められました。だんだん大きいのが欲しくなられ、一人では淋しいから姉妹が欲しいとおっしゃって…。とっても気に入られたのがあって、それは、大きいから、お値段も高くて、どうしようかと迷われていました。私もお店にご一緒したりしましたが、結局三回ぐらいお店にかよわれ、「まだあったから、あの子は、わたしを待っていたんだわ」とおっしゃり、とうとう買われたのが、松の模様の着物を着たお人形で、松子という名をつけられました。赤い着物を着た子は、紅子ちゃんという名にされました。
 安房さんは、その写真を撮って、絵葉書を作って、「松子という名前にしました」と書いたりして、送ってくださいました。そして、こんなに人形にうつつをぬかしたりするのは、いい歳をして恥ずかしいし、人には話せないけれど、あなたならわかってくれるから…と、夢中になって人形のことを話されました。

お好きな言葉

 安房さんは、よく、「謎めいていて素敵ね」とおっしゃいました。それで私も謎めいていることは、価値があるのだと思うようになりました。謎めいていることが、安房さんの作品につながっているように思えます。安房さんの作品には、闇がある、絵でいいますと、後ろに黒いグラウンドがあるというような感じです。安房さんには、闇の世界、死の世界に引き付けられるような体質があったのではないでしょうか。
 ある時、こんなことを話されました。
 子供の時から、夜眠る時に、眠りと眠らない世界の境界はどうなっているのだろうと考えられたそうです。その移行する瞬間を知りたくて、いつくるか、いつくるかと思いながら眠ったというのです。闇とか死の世界への移行に、子供の時から興味があり、そういう世界に行ったり来たりすることにずっと惹かれていたようです。その闇の世界をご自身の作品の中にも作り上げられ、なぞめいた魅力になったのではないでしょうか。

 会場からの質問

* お二人とも直子さんですが、
  名前が同じことをどう思いますか?

 たまたま同じですが、安房さんの作品を読んだ時に、いつか、この方にお会いすることになるだろうという、予感といいますか、ご縁のようなものを感じました。それから、初めてお電話いただいた時に、安房さんのご主人のご職業が私の主人と同じではないかと直感いたしました。安房さんは、どうしてわかったのかと、びっくりしておられました。本当に、ご縁があったのです。

* 最初に読まれた作品は?

「詩とメルヘン」で味戸ケイコさんが絵をつけられた「声の森」でした。たまたま本屋で見つけましてね、まず絵にせられました。すごい絵を描く人がいると思ってびっくりしました。それから読んで、なんて絵と文章がぴったりしてい
るんだろうと感心しました。ぞくっとするようなこわさのあるお話でしたが、優美な文体と物語にひき付けられて、それから、講談社から出ている文庫本を次々に読みました。私が三十歳を過ぎてからです。単純な子供向けのお話でない、影に引き込まれていきましたね。あとは、『風と木の歌』の作品が好きでした。
安房さんは、本当にたぐいまれなファンタジー作家でしたね
「花豆の会」には、お声をかけて頂だきながら、なかなか出席できませんでした。集団に入るのが苦手なものですから、まして、人前で話をするなんてほとんど初めてで、お聞き苦しかったのではないかしらと心配です。長い時間お聴きくださいまして、ありがとうございました。 

※本文中のカットは、南塚さんの絵本から、ご了解をいただき、転載させていただきました。
なお紙面の都合で、一部お話を割愛させて頂きましたので、ご了承ください。(文責・花豆 世話人)
※ホームページ掲載にあたり、一部を略させていただきました。



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  安房直子記念館を開館して  出水 秀樹

 

   担任の6年生の生徒たちと、研究授業で「安房直子記念館」を作る という快挙をなさった、出水(でみず)さん。
  子どもたちが安房さんの世界を、自分自身の感動と行動で知っていったという、情熱的なお仕事に、脱帽です

 安房 直子さんとの出会い

 私は、千葉県市原市で小学校に勤務しています。まだ、未熟者の私が原稿を書かせて頂ける機会を与えて下さった事に感謝いたします。初めに、私と花豆の会・安房直子さんとの出会いを書かせて頂きたいと思います。

 振り返ること約二年前、市原市の国語教育研究会で研究授業の大役を授かり、どのような授業を展開しようか考えていました。学級経営の柱の一つに、「読書」を据えていたので、国語科から考える読書教育を行いたいと漠然と考えていました。
 そして四月に、市原市立若葉小学校6年生の担任となりました。研究授業の月は十一月と決まっていましたので、教科書をみると、安房直子さんの「きつねの窓」が載っていました。そこで、「よし、安房直子さんの物語で授業を行おう」と決めました。早速その日から安房直子さんの本を読みあさる毎日となりました。その時、ふとインターネットで「安房直子」と検索をした時に、「花豆の会」の存在を知りました。

 そして、「会の集い」が五月にあることを知り参加させて頂いた次第です。そこでぶしつけにも、「安房直子さんの著作で研究授業を行いたい」と話しをしました。
 全く初対面の私に優しくしていただき嬉しかった記憶があります。それから、花豆文庫に何回か参加させていただきました。行くたびに、安房さんの魅力に引き込まれ、さらに本を読む日々でした。  

  

 記念館 開館!

 四月当初、読書の時間に全く本を読まない 読書がきらい、面倒くさい という児童がたくさんいました。「この子たちに安房さんの本の持つ魅力を伝えたい」と考え、クラスの児童に勧めました。
色んな本を読み聞かせしました。一番、反応が良かったのは「雪窓」でした。何度もアンコールが出るほどでした。「魔法をかけられた舌」「天の鹿」も人気でした。
 そこで、研究授業は「記念館活動」という新しい単元を作り、「安房直子記念館を作ろう」としました。実際に、学校の空き教室に安房直子記念館を開催しました。その際に花豆の会から素敵なお手紙を頂戴しました。子どもたちは、本当に意欲的に活動しました。ここに写真を載せますので見ていただきたいと思います。

 児童にとって、安房直子さんの記念館を作ったことは、大きな思い出となりました。@安房さんの生いたちA花豆の会B安房さんにとっての色C本の紹介D読み聞かせE紙芝居F店G安房さんによって命を吹き込まれた生き物H安房さんの本の紙版画Iぼくのわたしのおすすめ本など、たくさんのコーナーがありました。他の学年や保護者の方にも、とても好評でした。

 しかし、くしくも、私の異動が決まってしまい、記念館を閉館した時の児童の悲しい顔は忘れることが出来ません。でも、児童の心の中には、しっかりと安房直子さんが根付いています。安房直子記念館で児童が造った作品は私が保管しています。一生の宝物です。そしてこの研究を今年度、千葉県の大会で発表することとなりました。本当に、子どもたち、花豆の会の皆様、安房直子先生に感謝したい。

 


 その後の、出水さんからのお便りによりますと、無事に「千葉県教育研究大会」(国語科の文学教育部会)で、安房直子記念館についての授業の取り組みを発表。さらに、千葉県の代表の一員として、「全国大会」に参加されることになったそうです。 

 

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 花豆文庫だより   根岸 一博


2008年9月7日(日)、桜楓会館    十三名出席。前半は読書、後半は懇談
 出席者の野口満之さん(講談社)が持参・寄贈くださった週刊現代の「リレー読書日記」(桜庭一樹著)のコピーに、安房さんの文庫本『南の島の魔法の話』のことが書かれていて、回し読みをしました。


2008年12月7日(日)、桜楓会館   十四名出席。前半は読書、後半は懇談
 出席者の野口満之さんから、講談社]文庫『春の窓』についてのお話があり、「30代女性を対象にした安房さんの作品を選んだ。予想以上に売れている」とのことでした。 また、近江竹生さんから、2009年4月に、西東京市で「こもれびde安房直子朗読館」(公募の朗読会)開催のお知らせがありました。


2009年3月8日(日)、桜楓会館   十名出席
 当会に度々参加されている甲府市の望月麗さん(15歳)のコンクール入賞のお知らせに、参加者一同で喜び、望月さんから寄贈頂いている受賞作のファイルを、再度見せて頂きました。また、安房さんの作品についてや、近況報告などを、各自が話しました。

2009年5月24日(日)、桜楓会館
 正午から「集い」開催までのあいだ、多くの方が参加、安房作品の書籍やコピー作品などを熱心に読まれました。



 白樺のテーブルトーク
 保 谷 の 家                                   ハ チ

 僕の大好きな保谷の家。
烏瓜の実が落ちる頃、梅の花が春を告げ、青い実が黄色く熟して雨に打たれる。それから枇杷や柘榴が顔を出し、僕の大好きな松ぼっくりが沢山落ちてくる。保谷の庭で連日松ぼっくりを追っている僕の名はハチ、当年二歳少々の柴犬である。
 この家に暮して感じるのは重層的な雰囲気、異次元の空間と時間の流れだ。保谷の家には、森羅万象を慈しむ巨きな雰囲気がある。
 僕、思うに、これはお二階で童話を書いていた安房直子さんの濃密な時間が、今も、この家に流れているからじゃなかろうかと。お陰で僕はこの家にいるだけで幸福だ。
 しかし、唯一、不満がある。女のヒトや男のヒトが集まると、「花豆」や「花豆の煮えるまで」が頻繁に聞こえるが、「花豆」なるものが僕の食膳に上ったためしがない。
 ヒトは得てしてイヌの願望を汲み取れないものだ。そんなとき、僕は異界にワープする。
 花豆の煮える匂いに鼻をうごめかせ僕が台所にいくと、安房直子さんが「あら、来たの、食いしんぼさん。さあ、おあがり」と、炊き立ての花豆を食べさせてくれる。ほかほかの花豆は旨い、旨い。「気に入ったのね、嬉しそうな顔をして」。その声は、そよ風のように僕の耳を撫でるだろう。
 保谷の家の縁側で半眼になった僕は、舌なめずりしながらそんなことを思っているのだ。



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 〜たくさんのお便りを有難うございました。お便りの中から一部をご紹介します 〜

講談社X文庫から出た「春の窓」、とても懐かしく昔の作品を楽しみました。個人的には「花のにおう町」がもう一度読みたいです。
  (M.O.さん)
北海道は、5月半ばに桜が咲きます。安房さんの「うぐいす」を読み、春の気分を味わいたくなります。(Y.Y.さん)

今年4月に保谷のこもれびホールで安房直子作品九つの朗読会が催され、私も「天窓のある家」を読ませて頂きました。2日間、大ぜいのお客様で、安房直子作品のすばらしさを実感しました。(N.O.さん)

「花豆の会の集い」では、安房さんのことがたくさんお聞きできそうで、行きたいとぎりぎりまでがんばっておりましたが、やはり無理かもしれません。皆さまによろしくお伝えください。こもれびde朗読館には伺って、安房さんの世界にすっぽりと埋ってきました。安房さんの物語を愛する人たちが増えて、ますます深くなっていくこと、これ以上の嬉しさ、喜びはありません!(画家・味戸ケイコさん)

ホームページと、送っていただいた「花豆通信」バックナンバーを拝見し、感激しています。安房直子さんの写真入りの4号はとても嬉しかったです。安房直子さんのお顔を初めて拝見した時には思わず涙ぐんでしまいました。「レースの海」を読み始めると、あっという間に物語の世界に入ってしまいました。そして、短い物語なのに余韻がいつまでも残っています。海の色や匂いまでも。エッセーなども胸につんとくるものばかりです。このせつなさは、安房直子さんが今はもういらっしゃらないということよりも、彼女の作品からくるものではないかと私は思います。(Y.E.さん)

在米の翻訳家・亀井敏也さんが、「The Fox's Window and Other Stories」の出版は来年の夏ですというお知らせと、とても心を引き付けられる「フォックスウインドウズ」の表紙絵を、メールで送ってくださいました。たのしみですね。

 〜 望月麗さん 文部科学大臣奨励賞を受賞! 〜
「花豆の集い」の、近年のレギュラーメンバー? の望月麗さん(山梨英和中3年)が、自由研究集「安房直子―メルヘンとファンタジーの狭間で―」で、「図書館を使った調べる♀w習賞コンクール」(NPO図書館の学校、日本児童教育振興財団主催、読売新聞社後援) 中学生の部で大臣賞を受賞されました。うららさん、おめでとうございます! 

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 安房作品と私 第三回 

 しんぼう、しんぼう    〜『海の館のひらめ』より    竹本 由紀子 

 
 

 
 

 もう、この店は、やめよう。やめて、ほかのところで、
やりなおそう……そう、心に決めかけた、そのときです。
「しんぼう、しんぼう」
と、だれかがいいました。
「え?」(中略)
「わたしが力になってあげますから、もすこし、ここで、しんぼうなさい」
 なんだか、死んだ父さんの声ににてるなと思ったとき、しまおは、流しの下の氷の上に寝ている一匹のひらめを見つけたのです。いいえ、ひらめと、目が合ったのです。

              (ちくま文庫『童話集 遠い野ばらの村』より)



海の館のひらめ 

 わたしがこの作品と出会ったのは、しまおさんと同じ二十二才、大学四年生でした。当時のアルバイト先は「アカシア」のような一流レストランではなく、大阪の繁華街にある小さな食堂でした。焼き魚定食が定番メニューで、つらい時「しんぼう、しんぼう」と言ってくれる魚の目をさがしていました。
 十年後、縁あって愛媛に嫁ぎました。
東京と大阪しか知らないわたしには、苦しい日々でした。空がどんなに青くても、山がどんなに緑でも、さみしかったのです。
わたしの家は海ぞいで、義父は現役の漁師です。毎日、新鮮な魚が水あげされてきます。その中に、目玉をキロキロ動かしている魚がいないか、わたしはまた、さがし始めました。
すると、まだピチピチと生きていて、全身で語りかけてくれるひらめがいたのです。
この地の人々の温かさと、魚の、いえいえ、直子さんの、背中を押してくれる言葉のおかげで、十五年、しんぼうできました。
この春、水産高校生になった一人息子は、悲しい沈没事故のあった「えひめ丸」に乗って、初めての体験航海にでました。出航の朝、緊張する彼に、
「『海の館のひらめ』がついているから、だいじょうぶ」
と送り出しました。
 眠れない晩、満天の星空を見上げると、通過する銀河鉄道の窓から、「しんぼう、しんぼう」と言ってくださる直子さんの声が聞こえて、せつなくなってしまいます。

 
   

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 花豆・粒粒 (一部抜粋) 


● 5月の「花豆の会の集い」に例年、「気持ちの参加」として参加費カンパを、年間のカンパ等とは別に、お送りくださる方々、ありがとうございます。「花豆の会」の会計が、今年は赤字になってしまいました。今後の会の在り方全体を検討中です。

● 次回「集い」は、来年5月23日(日)の予定です。4月初旬にご案内をお送りします。ホームページにも、そのころにアップしますのでご覧下さい。

 「花豆の会」は、会員制をとらず、皆様からの寄付やカンパによって運営しています。「花豆通信」の制作・郵送費や、ホームページ作成経費の一部として、千円程度のカンパを頂けると幸いです。80円切手または郵便振替を、ご利用下さい。

● 運営スタッフを募集中です。「集い」の運営、「花豆通信」制作、PC操作、会計、HP管理、などが主な仕事です。ご参加頂ける方は、事務局までご連絡ください。世話人 “高齢化”のため、PC操作(受付、会計)の一部と、ホームページ更新などを、専門の方にお願いしている現状です。

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